アリスの会・東京の集いと産推研関東地方会による共同講演会の開催報告(2019年9月21日)

アリスの会・東京の集いと産推研関東地方会による共同講演会の開催報告

去る9月21日土曜日に、「令和に紡ぐ男と女の働き方改革」と題して、2名の先生をお迎えし、講演会を開催しましたので、ご報告します。

最初に、アリスの会会長で株式会社JUMOKUの長井聡里先生(産業医大医学部6回卒)からご講演をいただきました。先生からは、働き方やキャリアが多様化している状況があり、一方で、女性の特性として妊娠・出産、更年期などの体調の変化があり、既存の健常成人男性をモデルにした健康管理では対応できない面が多いことをご紹介いただきました。また、生物学的な性差と社会文化的な性差の両方を考慮することが重要であり、女性の年齢に合わせたライフイベントと身体変化を考慮することが大切であることが述べられました。女性が更年期から老年期までも元気に働くためには、健康に歳を重ねていくことができるような支援が重要であり、働く女性の健康管理の在り方は、今までの健康施策の在り方も含めて、広く見直す必要があると説明がありました。女性が男性のような働き方をすると言う時代から、男性が女性のように暮らすという考え方がこれからは良いのではないかともお伝えいただきました。また、女性が学会等に参加しやすくするためのアイデアもご紹介がありました(これは先の産業衛生学会全国協議会でのワークショップでの成果の一部)。女性にとって働きやすい職場づくりの工夫として、女性の優しい職場づくりナビ、けんせつ小町HP、プレコンセプションケアのHP等についてご紹介いただきました。

後半は、野木病院副院長、筑波大学附属病院臨床教授である加藤士郎先生よりご講演をいただきました。漢方外来で多くの症例を経験されており、また産業医としても豊富なご経験をお持ちの先生です。加藤先生のユニークなお人柄で、非常にわかりやすいご講演を聴くことができました。まず、東洋医学の考え方のひとつに「気血水(きけつすい)」という概念があり、それら3つの要素の働きによって、身体だけでなくメンタルヘルスにも影響するというご説明がありました。冷え性やのぼせといった女性労働者のプレゼンティーイズムの原因となり得る症状に対して、大豆イソフラボンの代謝物であるエクオールの効果が確認されていること、東洋医学的な生活習慣指導や、漢方薬も有効であると教えていただきました。興味深いお話として、女性の不調の原因に夫とのコミュニケーション不足「夫源病」があること。その一番の予防策は、家庭におけるコミュニケーション量であることもお話しいただきました。研究会後の懇親会においても、個別事例の相談にも快く応じてくださいました。

会場での参加者は、計26名でしたが、子育て中の会員が、自宅からでも気軽に勉強会に参加できるよう、Zoomによる遠隔配信も行いました(会員のみに、希望された方にURLをご連絡して視聴していただきました)。さらに、託児所も会場隣の部屋に用意して、託児サービスも行いました。懇親会でも、参加者がお互いの近況を報告したりするなど、交流を深め、盛会のうちに終了となりました。

定期的に開催しているアリスの会と産推研ですが、近年参加者を集めることが困難になりつつあります。一度足を運んでいただき、参加すれば、参加者の皆様から「参加して良かった」とのお声をいただくため、今回は趣向を変えてみること及び事務局の負担軽減のために、コラボ企画を行いました。アリスの会では去年から講演会の遠隔配信にチャレンジしておりますが、今回は産推研関東地方会とコラボすることで、より円滑に出来たと思います。まだ課題は残りますが、次回に向けて改善出来そうです。今年の会場は産業医科大学40周年記念事業で、大学が一般社団法人ライフサイエンス・イノベーション・ネットワーク・ジャパン(LINK-J)の会員となったため、使用可能となった日本橋ライフサイエンスビルディングで実施しました。会場の予約には東京事務所で行っていただきました。

本報告書の文書作成には労働安全衛生総合研究所の朝長健太先生、厚生労働省の野口裕輔先生、日本製鉄株式会社の守田祐作先生、東海大学の深井航太先生の協力を得ました。合同開催の事務局として三菱ふそうトラック・バス株式会社の小笠原隆将先生とヘルスデザイン株式会社の坂本宣明先生には大変ご尽力いただきました。この場を借りて御礼申し上げます。

アリスの会・東京の集いと産推研関東地方会による共同講演会の開催報告(2019年9月21日)


アリスの会 東京の集い担当 大津真弓(19回生)