アリス四季の集い・夏 東京(2017年6月18日)

アリス四季の集い・夏 東京 開催報告

アリスの会初代会長で、前産業医大微生物学教授の谷口初美先生をお迎えし、産業医大東京事務所にて東京の集いを開催しました。参加者は28 名(うち子ども4 名)と過去最大の参加数となりました。加えて大阪の集い担当の中西理事と総務担当永田理事がSkype を使いサテライト中継で講演を拝聴するという初の試みも行いました。

谷口先生からは今回の講演テーマである「微生物学者が乳がんになった時」を執筆しようと思ったいきさつから文書には出来ない裏話まで、対面だからこそのお話が余す事なく伺えました。加えてアリスの会の設立話から現在の会員に期待する事まで、先生の思いを直接伺える貴重な機会になりました。

その後同会場でケイタリングの食事を食べながら、参加者が一人一人自己紹介を行い、近況報告や谷口先生とのこれまでのエピソードに言及され、日頃の悩みを吐露する座談会に変わりました。参加者それぞれが仕事と家庭生活の両立等に苦労されながらも医師として社会で役立ちたい思いがあるようです。
気がついたらもう16 時!というあっという間の6 時間でした。谷口先生からは一人一人に愛にあふれたお言葉をいただきました。谷口先生とのひと時は、参加者にとって忘れられない時間になったことと思います。

最後に会場を無料で使用させて頂いただけでなく、事前準備や当日朝早くから会場準備をお手伝いいただき、最後の後片付けまでして頂いた東京事務所の皆様、特に当日ご参加頂いた高崎様に、厚く御礼を申し上げます。

四季の集い東京担当 大津真弓(19 回生)

 

講師からの一言

先日ラジオで、哲学者、教育者の鶴見俊輔が生徒さんに「退職したら遊びに来て、その時本当の教育ができる」と言ったと放送していました。退職して、初めてアリスの会に参加して、その意味が分かりました。大学では微生物の講義に追われました。テストや国家試験に必要な知識は外さないように、時間内に完遂できるように、全員合格できるように、学生さんも忙しかったけど、教員も忙しかった。医者になる人を教育する場なのに、人生について、生命について語り合う時間も場所もなかった。

それでも耐えられないほど苦しい時、訪ねてきてくれた生徒さんや卒業生の姿は脳裏に焼き付いています。なにも役に立つことはできなかった、ただ話を聞くしかできなかった。別れる時、大丈夫かな?これからどうしていくのかな?と、心配をいっぱい抱えて、もどかしさいっぱいの気持ちで見送った。そしてそれは今回も同じ。年齢を重ね、苦労を乗り越え、またさらに深刻な苦労に直面している人、いま一応平穏な人など、それぞれに事情は異なる。

24 の瞳の大石先生が12 人の子供たちの人生にかかわっていく姿を思い出します。先生と生徒は公的立場における親子のようなものという関係は、退職しても当然ながら続くんですね。癌なのに元気の源は何ですか?と聞かれます。アリスの会の皆さんのおかげですと答えていましたが、心配な子供がたくさんいるという、いっぱいの幸福といっぱいの心配のおかげなのでしょうね。

癌の遺伝子変異、免疫環境は各自で異なる。人生も個々別々です。東京から帰る飛行機の中で、楽しかったたくさんの思いと、皆さんの人生が少しでも平穏であることを願う気持ちでいっぱいであることに気が付いて、私は先生なんだと驚いていました。子供のおかげで親が親として成長していくように、先生も生徒さんのおかげで先生になっていきます。皆さんの平穏を祈っています。

谷口初美

 

参加者の声

三年ぶりにアリスの会に出席しました。私は入学時からアリスの会がそこにあった最初の世代です。発足に至るまでの諸先生方の当時の奮闘を十分に想像することはできませんが「自分がした苦労は、他の人にさせたくない」「すべての経験を未来につなげる」という皆様のお気持ちで成立している会である、と肌で感じます。

学会、勉強会等は実積がないと参加しにくい中、何かを成し遂げていなくても、その場で発信できることがなくても、「おいで」と呼んでいただける場所があることをとても幸運に思います。実際にそこに足を運べなくても、自分も参加してよい場所があることは確かな支えになります。

在学中、谷口先生がおっしゃっていたことが印象に残っています。「何もないと誰も自分のところに来ないけど、何かあったら来る」きっとアリスの会もそうなのだと思います。普段は意識に上らなくても、必要なときに、「ああ、あそこに行ってみよう」そう思える開かれた場所が、細く、でも確かに、これからも長く続いていくことを願っています。
 

参加者の声

初めてアリスの会に参加しました。卒後しばらくは臨床の道を選んだことが少し後ろめたく、このような集まりには消極的だったのですが、最近は気持ちの余裕ができ、他の人たちはどんな風に生活しているのだろうという純粋な興味を持っていました。そんな時、会報で谷口先生がご病気になったと知り、病状を心配しながらも闘病中のお話が伺えるということで参加しました。

先生は想像していたよりお元気でまずはほっとしました。時にはユーモラスに、時には赤裸々に闘病生活をお話くださることで、うかがい知ることが難しい患者さんの率直な気持ちを少しは知ることができたような気がします。忙しさや慣れにかまけて、患者さんとお互い人間としての関係を築けていたか、普段の自分を省みる良い機会になりました。

最後に、それぞれがいろんな人生を歩み、現在の仕事も生活環境も異なるメンバーが集まって語り合う、このような貴重な機会が得られたことを感謝しています。今後もこの縁を大切にしたいと思います。