微生物学者が乳がんになった時(Ⅱ:がんも最期は感染症 その7)

Ⅱ:がんも最期は感染症<2014年9月~2015年11月>その7

がんも慢性疾患

アンジェリーナジョリーさんのニュースで乳がんがBRCA1遺伝子変異で遺伝することは有名になりました。あれだけ勧めても行かなかった娘もあわてて検査に行きました。乳がん、前立腺がんが確実に増えているそうですが、乳がんや前立腺がんのようなホルモンでコントロールされるがんの場合は比較的コントロールしやすいそうです。特に乳がんの研究は他のがんに比べて進んでいて、標準治療法もしっかりしているそうです。今まではがんの変異に注目して研究が進んでいましたが、いまは副作用に対する抵抗性も含めてホールゲノム解析が行われているとのことです。副作用がコントロールできれば、抗がん剤は良い薬だと実感します。

しかし、若い方の場合はがんの質が悪い場合が多いそうです。やはり早期発見、早期治療に努めてください。乳がんは早ければおできを取るように簡単だと言われました。

がんもそういう時代なんですね。

がんも慢性疾患と考える時代になってきたそうです。

抗がん剤と感染症

抗がん剤治療中におきる感染症について、バラバラに書きましたので、ここで簡単にまとめます。感染症の発症には微生物の病原性と人間の免疫抵抗力のバランスが大きく影響します。健康で免疫抵抗力が強ければ少々の病原体にも打ち勝ちますが、乳幼児、高齢者、病気等で免疫抵抗力が低下している人などは、病原性が弱い病原体でも打ち勝つことができず感染症にかかりやすくなります。
抗がん剤の骨髄抑制は、まさにこの免疫抵抗力の低下を起こします。

感染症は、内因感染と外因感染に大別されます。自分自身が持っている身体に中に潜んでいる病原体が起きだして悪さをするのが内因感染、インフルエンザのように自分以外の人からうつるのが外因感染です。内因感染は、ウイルス性のものとして、口唇ヘルペス、帯状疱疹(タズ)、B型肝炎ウイルスなど、細菌性のものとしてMRSA(鼻腔、手術時注意)、虫歯や歯周病から口腔細菌の感染、痔から糞便細菌の感染、胃のピロリ菌など、真菌(カビ)としては水虫などがあります。外因感染としては、経気道感染として肺炎や呼吸器疾患の病原体の肺炎球菌、インフルエンザウイルスなど、経口感染としては胃腸が弱るので生ものの生食は避ける、接触感染としては皮膚が弱るので経皮感染もふくめた注意が必要です。抗がん剤治療中にこれらの症状が出た場合は、すぐに主治医に相談することが大事です。感染症は死期を早めます。

お薬管理

お薬管理毎朝これだけ薬を飲みます。長期になると、いや加齢によるものかもしれませんが、飲み忘れや、2回飲みがそろそろ心配になってきます。起きて、体温や血圧を測って、食前の薬飲むまでは問題ありません。その後洗濯機回して、顔洗って、ご飯食べて、茶わん洗って、掃除して、と食後についでに色々済まそうとすると食後の薬をつい忘れます。だから毎朝飲む薬を全部この盃のようなものに入れて、食後のお薬だけを残しておくと、飲み忘れていることに気づきます。

アンブロキソール1錠(去痰剤)、海の詩(フコダイン)2錠(肺がん予防)、サルベストロール2錠(がん予防)、補中益気湯1袋(体質改善)、八味地黄丸1袋(腎臓、腰痛、下半身のむくみ防止など)、ビタミンC 2袋(がん予防)は食前、メコパラミン1錠(末梢神経障害予防)、アイミクス1錠(高血圧予防)、リバロ1錠(高コレステロール予防)は食後です。脊椎管狭窄症で痛いので、セレコックス錠1錠(鎮痛剤)、ガスロン1錠(胃薬)も食後に飲みます。器は高取焼でパワーがあるとのことで求めました。飲み間違いを起こさないために、色々工夫が必要になってきました。もちろん、これらをかかりつけ薬剤師が一括管理していただけるのは助かります。これらの薬の相互作用は分かりませんからね。

温泉・転地療養・細胞性免疫

今のところ体重が減ることもなく、完食するがん患者は初めて見たといわれるくらい食欲は健在です。体力は間違いなく落ちていますが、加齢によるものか、がんによるものか、抗がん剤の副作用によるものか分かりません。結果的に4月から毎月、有馬温泉、函館、高知などと出かけて「がん患者の行動ではない!遊びすぎ!」と言われています。温泉はがん治療に良いそうですが、抗がん剤で流れの悪くなった血流がよくなるのでしょう、健康だった時より間違いなく気持ちが良い!しかしレジオネラと硫化水素のことを念頭においています。

四万十川の帰り

四万十川の帰り

卒業生に誘われて四万十川上流の梼原町というところに行きました。山崎豊子の「白い巨塔」の柳原医師が飛ばされた山間の診療所のモデルになったという診療所が今も女医さんによって守られていました。坂本龍馬脱藩の道があるという、ここの空気がそれは、それはきれいだったのです。階段を登って、セラピーロードと言われる山道を歩くのですが、胸壁と乳がん原発巣がくっついているため、いつもならすぐに呼吸困難を感じるのに、ここを歩いたときには全く呼吸困難を感じなかったのです。
結核患者の転地療養の意味が分かりました。空気がきれいなところでは、傷んだ肺でも呼吸がしやすい。

今年は肺機能が良くなってきたのでしょうか、呼吸困難を感じることも少なくなった気がします。ただ花粉症やPM2.5のアレルギーと思われる症状の時や、天候が悪く、低気圧の時には、肺のがんが再発したかと心配になるような呼吸困難を感じます。

しかし、昔、結核研究をしていたためにツベルクリン反応が強陽性(前腕全体が赤く腫れ上がり数か月間消失しなかった)だったのですが、そうならば細胞性免疫がしっかりしていると思われるからがんにはならないと言われたことがありました。父方が結核家系の私の場合、そう理屈通りに都合よくはいかなかったようですが、それでも64歳まで発病せず、いまがんの進行が遅いというのは、意外にそのお陰かもしれないと根拠の薄いことを考えています。

交通事故

乳がんになったことを知らせたら、精神科医の卒業生からすぐに「交通事故に気を付けてください」と連絡が入りました。そう言われたにもかかわらず、同じ駐車場の同じ場所で、バックで駐車する時に同じフェンスにぶつけて、トランクを破損し、1回目は10万円近く、気の毒に思われたのか2回目は少し安くして頂いて数万円というお金をかけて修理するという情けない、かつお金がもったいない経験をしました。自分ではしっかりしているつもりでも、抗がん剤治療を始めたばかりの昨年は注意力散漫だったようです。いまだに年間2万kmを走る身としては、高齢者の交通事故のニュースを聞くたびに、75歳になったら免許証を返上しよう、しかしそれ以上生きていたら病院までどうやって通うべきかと考えてしまいます!目的地を言えば、完全自動で運んでくれる人工知能をもった自動車が、金銭的に私の手の届く範囲になるのはまだまだ遠い先のことでしょうか。と、能天気なことを考えていたら、保険の治療給付金の支給は600日まで、つまり5年間だけ。すでに2年半経っている。どこまでもお金が付きまとう。娑婆!娑婆!{娑婆(シャバ)の意味は「俗世間」、語源はサンスクリット語の「忍耐」に相当するsabaの音写だそうです。昔、先輩ドクターがため息交じりに嘆いてあったのを懐かしく思い出しました。}

データ

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